
ビジネス街を「誰もが楽しめるまち」へ
丸の内といえば、日本を代表するビジネスエリア。平日はオフィスワーカー、休日は買い物客が行き交う場所というイメージが強いでしょう。
「丸の内エリアは、どうしてもビジネスエリアですので、普段来られる方が限定的になりがちです」と語るのは、三菱地所のイルミネーション担当者。「私たちの狙いは、この限られた人しか来ない街を、イルミネーションによって一気に対象となる人々の幅が広げることです」
実際、近年はイルミネーションと並行して実施されている「Marunouchi Street Park」——道路を一時的に交通規制して歩行空間を作る社会実験——によって車道を歩きながらイルミネーションを鑑賞でき、ベビーカーを押す家族連れやお年寄り、制服姿の女子高生など、普段オフィスエリアには馴染みのない層の姿が見られるようになったといいます。

実際に丸の内仲通りを歩いてみると、観光客らしい外国人や、SNSで配信する若者たちの姿も目立ちます。インバウンド観光客が皇居外苑の和田倉噴水公園を目指す途中、イルミネーションをきっかけに丸の内に立ち寄るケースも増えているそうです。

24年間変わらない「シャンパンゴールド」の理由
丸の内イルミネーションは、2002年の丸ビル竣工を機に始まり今年で24年目を迎えました。当初は10月や11月の早い時期に実施されていましたが、好評だったためホリデーシーズンにシフトし、定番イベントとして定着。約250本の街路樹をシャンパンゴールドのLEDで彩っています。
今年は11月13日から2026年2月15日まで約1.2Kmの丸の内仲通りを点灯し、12月は深夜0時まで延長。さらに東京駅と皇居外苑を結ぶ「行幸通り」でも、11月28日から12月25日までイルミネーションを点灯。行幸通りには約4メートルのもみの木を使ったクリスマスツリーが4本設置され、東京駅を背景にした新たなフォトスポットが誕生します。
過去最大規模のクリスマスマーケット
Marunouchi Street Parkでは、過去最大規模となる計19店舗が出店。行幸通りと丸の内仲通りで、それぞれ異なる特色を持たせています。

行幸通りの10店舗は、手包みピザやパンの器に入ったビーフシチュー、ホットドリンクなど、クリスマスマーケットの定番メニューが中心。
一方、丸の内仲通りの9店舗は、ここでしか味わえないエリア内のテナントやホテルと連携した独自性の高いラインナップです。
ザ・ペニンシュラ東京のシュトーレンやストロベリープリン、帝国ホテルのシェフアレンジによるミネストローネ、中華×スペイン料理のTexturAによる「テクチキ やみつき唐辛子味」やホットサングリアなど、他のクリスマスマーケットでは味わえないメニューが並びます。
物販では、クリスマス雑貨や週替わりのアンティークマーケットも展開されます。
環境配慮と「まちの賑わい」をどう両立するか
経営者や投資家として気になるのは、ESGやCSRの観点です。三菱地所は統合報告書でサステナビリティ経営や環境負荷低減を掲げていますが、大量の電力を消費するイルミネーションとの矛盾はないのでしょうか。
「丸の内イルミネーション自体は、再生可能エネルギーを使って点灯しています」と太田さんは説明します。「企業として環境配慮は当然重要だと認識しつつも、だからと言って丸の内の冬の景色として親しまれているイルミネーションを辞めてしまうことは、来街者やワーカーの方々が感じる賑わい、日々のモチベーション、そしてワクワク感といった、人々の楽しみを損なうことにつながりかねません。そのため、環境負荷を抑えながらもまちの魅力を高める持続可能な運営に取り組んでいます。」
不動産デベロッパーとしての責任としては、環境への配慮だけでなく、ワーカー、テナント、来街者を含めた「まちの人たちへの配慮」も含まれる——。省エネや再生可能エネルギーの活用に意識を向けながらも、まちの盛り上がりを作ることも重要な役割だと考えています。
実際、テナントや周辺からは「イルミネーションが来ることでお客様が増え、利益に直結する」「景色が綺麗で、ここで働くワーカーのモチベーションが上がる」といったポジティブな声が多く寄せられているといいます。
三菱地所だけではできない「まちづくり」
このような大規模イベントは、三菱地所がエリアの多くのビルを保有しているからこそ実現できるのでしょうか。
「必ずしも三菱地所単独でできるものではありません」と太田さんは強調します。イルミネーションもMarunouchi Street Parkも、実行委員会形式で運営されており、一般社団法人大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会(以下、協議会)や、NPO法人大丸有エリアマネジメント協会(以下、リガーレ)が参画しています。
道路占用には公共性が求められるため、NPO法人であるリガーレが主体となり、三菱地所は共催企業を集めるなど旗振り役を担う。協議会やリガーレが入ることで、地域としての合意をベースに開催される仕組みです。
「脱クルマ、歩行者に優しいまち」の先駆けへ

三菱地所のエリアマネジメント事業部が丸の内で目指すのは、人中心の歩きやすいまちづくり。Marunouchi Street Parkやアーバンテラスといった取り組みは、その理念の下で実行されています。
「一般の方から見て、公的空間である仲通り(千代田区道)・行幸通り(都道)と、三菱地所が保有する館内の商業施設とで、同時期に違うトーンのものが展開されないよう、社内連携を密にしてエリア全体としての一体感を大事にしています」
街全体が一体となって盛り上げができる雰囲気——。それこそが、三菱地所が掲げる「人を、想う力。街を、想う力。」の具現化のひとつだと思っています。
イルミネーションは単なる装飾ではなく、まちの在り方そのものを問い直す試みです。環境への責任と人々の喜び、企業の利益と公共性の調和——。そのバランスの中に、これからの都市づくりのヒントが隠されているのかもしれません。それではまたコンシェルジュ便りでお会いしましょう。









