丸の内とは別世界、招福楼ならではの空間演出
豊かな歴史と風土を持つ東近江に、明治元年に創業した「招福楼」。店内の装飾や扱われている食器、日本文化の粋を集めたような空間演出と旬の素材の魅力を引き出す料理に宿るおもてなしの心は、ここ東京店でも、本店と同様に味わうができます。さて、某日ランチタイムに取材に伺った私が通されたのは、京都の重要文化財の建物と釘の位置から全て同じ寸法に設計されているという「十方の間」。ゆったりとした空気が流れ、さきほどまで東京駅を歩いていた時の喧騒とのギャップに不思議な感覚になりました。

器や盛り付けにも、日本の四季を感じながら
複数あるランチメニューから、今回いただいのは、東京店オリジナルのメニューである『丸の内会席』。お料理はひとつひとつが繊細。素材の味が活かされていて味わい深く、器や盛り付けにも季節を感じられ素敵な時間を過ごすことができました。毎月変えているという献立は、食材の旬や市場の状況によって、その都度考えられる最高の一品に仕立てているとのこと。いつ来ても、初めての体験と味わいを、愉しむことができます。
個人的には〆の、鰻山椒茶漬けが印象的でした
食事の〆は、鰻山椒茶漬けでした。鰻に最も相性の良い山椒を醤油とお酒で煮込んだ招福楼自慢の鰻山椒煮。以前はデパ地下で購入できましたが、現在は本店・東京店とオンライン販売のみ。特別な方への贈り物としても喜ばれているというこの名品を口にして、唸ることしかできず。招福楼にお越しの際は必食です。ぜひお愉しみください。

もっと気軽に招福楼を愉しんでほしい
食事を終えたあと、本日の料理を供していただいた五代目中村嘉宏さんにお話しを伺うことができました。「招福楼というと『特別な日に』と思われる方も多くいると思いますが、ドレスコードもないですし、ラフに来店いただいてOK。マナーなどは気にせず、素直に料理を楽しんでください」とのこと。前述の「十方の間」だけでなく、高層階ならではの景色が楽しめるカウンター席や、最大24名までご利用可能な小間、皇居が望める洋室もあり、さまざまな目的に応じて、お部屋や献立の相談にのっていただけます。お客さまの中には、パートナーにさえこの店の話をせずに、自分一人の時間を楽しむためだけに使っている方もいるのだとか。

最後に…中村嘉宏さんの雑談も魅力の一つです
五代目 中村嘉宏さんは、4歳から禅問答されていたとのことで、幅広い知識のお話しがたくさん。取材後のオフトークも含めて大変愉しませていただきました。「東京店は先のビジョンが見えていた四代目の決断」「芯になるものは絶対にぶれてはあかん」「流行りに流されない」「皆がみな一緒では面白くなくなる」「旬は短い、その時に1番のものを食べてほしい」「父(四代目)が唯一祖父(三代目)に教えてもらったのは・・・」などなど。話される言葉は熱く細やかで一つ一つ心に響くものでした。たくさん伺ったのですがここでは書ききれませんので、読者の皆さまも、ぜひ直接お伺いください。私も今度はゆっくり一人で行ってみようと思います。