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Issue. 07

未来に向けて進化するオフィスビル

November 2024

“100年に1度”と言われる大規模再開発と共に

東京は現在100年に1度と言われるほどに、多くのエリアで大規模再開発が行われています。近年、多様化する働き方やライフスタイルに合わせて刻々と変化するオフィス。三菱地所グループでも2028年に東京駅日本橋口前に誕生予定のTorch Tower はじめ複数のプロジェクトが始動しています。
今回は、三菱地所グループで直近の竣工済・今後オープン予定のオフィスビル3 物件を通じて、これからのオフィスビルのトレンドをご紹介します。各々のオフィスビルがどのような想いとコンセプトによって創造されるのか、3物件の開発・設計者に「想い」を話してもらいました。

INDEX

PROJECT1

フロントプレイス千代田一番町

プロジェクトコンセプトは「アイコニック/フレキシブル/シームレス/ウェルビーイング」

「フロントプレイス千代田一番町」は東京メトロ半蔵門線「半蔵門」駅徒歩1分、千代田区一番町に2024年9月竣工。「WELL Core」予備認証を取得するなど、ワーカーの健康や快適性を含む「ウェルビーイング」を追求したオフィスビルプロジェクトです。

<丹羽>
2020年のコロナ禍に計画が始動したプロジェクトです。今までと同じでは意味がない、限られた面積でどのように新しい時代の働き方に寄り添っていくか、それが重要なテーマとなります。

<平松>
現代は、オフィスに限らず、場所を問わずどこでも働けるようになりました。その中で、外観自体が面白く、「行きたい」と働き手が思えるようなオフィスビルであること(アイコニック)、働き方・入居テナントの多様性、選択性があるビルであること(フレキシブル)、一番町らしさや健やかさを表現したビルであること(シームレス)。そして心身のストレスを緩和し、健康に働けるビル(ウェルビーイング)を追求しながら本プロジェクトを進めてきました。

「一番町らしさ」の追求から生まれたデザインコンセプト・「積石」

<平松>
「フロントプレイス千代田一番町」は、坂が多いエリア特徴、皇居の濠、英国大使館の石垣、靖国神社の石積をヒントに、異なる文化や社風を持つテナントの集積であるテナントビルのあるべき姿として、異なる石色や素材の石が積層しながらも、全体としての統一感をもたらすデザイン設計がなされています。

特にこだわったのは、500㎜出窓です。建築基準法上、500㎜の出窓は容積対象外となりますが、その出窓を帯状に設けることで、基準法上の面積よりも各階で10㎡ほど実態的な貸付面積を増大しております。つまりご入居テナント様にとっては、貸付面積対象外の場所を有効活用できるのです。
ファサードでは、積石を表現している出窓の形も4パターン、色は3パターンとし、同じデザイン・色調のフロアがない設計となっています。ご入居テナント様が独自のアイデンティティを持ち「唯一無二の場所」として好んでいただきたいと思っております。内装では、出窓部分にデスクやベンチを設置することによって働き方の選択肢を広げ、窓側を人が集まるマグネットスペースとすることで、内側からは街の風景と繋がり、外側からはオフィスの雰囲気が感じられるなど、街との繋がりを誘発するシームレスなデザインを体現しています。

<丹羽>
非接触でエントランスからオフィス空間までアプローチでき、空気式輻射空調の導入等により国際的なWELL認証基準をクリアしているため、ワーカーの方が健康で快適に働くことができるビルとなっております。
また、平面としては鍵型の特徴的なフォルムとなっていますが、東側は奥行きや幅が確保された整型区画としてご利用いただけるボリュームを確保しています。現状1フロア貸しですが、設備含め分割ができる造りとしており、追加の工事が必要にはなりますが、ご入居テナント様のご要望にフレキシブルに対応していきたいと考えております。高層階の9階・10階からは皇居の一部を望むことができます。

ワーカーと住民交流のポイントとして
注力した75坪の広々としたカフェ

<丹羽>
街に開けた機能として、周辺にない雰囲気を演出し、かつ開発者と設計者の想いを込めたデザインやコンセプトを汲み取ってくれるカフェを誘致しました。当ビルのオフィスワーカーだけでなく、近隣のワーカーや住民の方々にもご利用いただくことで、街に賑わいを誘発し交流が生み出されることを期待しています。尚、このカフェのOPENは、一番町にちなんで2025年1月11日を予定しています。

PROJECT2

(仮称)豊洲4-2街区開発計画

約50haの街づくりのラストピース

「(仮称)豊洲4-2街区開発計画」は豊洲2・3丁目地区における最後の大規模再開発となるプロジェクト。2棟のオフィスビルだけでなく、大屋根付きのイベント広場や歩行者デッキも整備予定の、まさに街の“ラストピース”を創造する計画です。

<多田>
今回の開発は、これまで長い年月をかけて開発が行われてきた豊洲という街の最後の大型開発となります。
2006年にIHIが豊洲IHIビルの完成をもって街びらきしてから20年近く、官民連携の街づくりによりこのエリアは都内でも有数のマンション・商業施設・オフィスビルなどが融合した活気のある街へと変貌しました。
豊洲2・3丁目地区まちづくり協議会によって策定された『まちづくりガイドライン』に沿って、広い歩行空間、緑豊かな空間が街全体に広がっており、調和のとれた質の高い都市空間を目指して街がつくられてきました。
かつて造船所だった記憶を継承する産業遺構物がモニュメントとして豊洲2・3丁目の様々な場所に設置されており、街全体に彩りを与えています。今までのまちづくりの歴史を踏襲しながらも、新しい風を取り入れることを目指して今回の開発に取り組んでいます。

新しい豊かさがここから始まる

<菅沼>
ワークスタイルがフレキシブルに進化する今、これからのオフィスビルには新しい豊かさが求められるようになってきます。
豊かさの一つとして交通の便を挙げさせていただくと、豊洲は銀座や大手町など、都心の主要なビジネスエリア、羽田空港へ軽快にアクセスすることができる立地です。また、新宿や渋谷よりも「東京」駅に近く、新幹線利用の際にも便利です。電車・タクシー・バス・自転車・バス高速輸送システム(BRT)など交通手段が豊富であることに加えて、有楽町線延伸計画も進行中で、今後さらなる交通利便性の向上が見込まれます。

<多田>
今回の計画は、多様なワークスタイルを可能にする1フロア約1,275坪の正方形のすっきりとしたオフィス空間をご提供すると共に、オフィス室内からはベイエリアの圧倒的な開放感がある眺望をお楽しみ頂けます。工事中のオフィスフロアを確認しに行くことが定期的にありますが、何度通ってもレインボーブリッジの見える眺望は圧巻です。
また、ビジネスのインスピレーション創出、ワーカーにやさしいウェルビーイングなオフィス環境を実現すべく各フロアに外部テラスを設置しました。
ビルの低層部にはイベント等を行える大屋根のついた広場、緑豊かなデッキ空間が設置され、ワーカーの利便性と街としての賑わいが創出されます。今後何十年もここで働きたいと思っていただける環境を目指して計画を進めてきました。

13階相当からの眺望(2022年7月撮影)
13階相当からの眺望(2022年7月撮影)

「住民×企業」豊洲の街
としての親しみを大切に

シェア企業寮ラウンジ完成予想CG

<菅沼>
本計画はテストキッチン・シェアキッチン、シェア会議室を備えたインキュベーション施設、シェア企業寮を計画しています。これらの施設は、スタートアップ企業を誘致し、支援する本来の目的もありますが、豊洲には大企業がテナントとして入るオフィスビルに加え、多くの住宅、マンションがあり、そこに住まう方々、つまり地域との交流も意識していきたいと考えています。

共用部完成予想CG
シェア会議室完成予想CG

<多田>
インキュベーション施設では、スタートアップ企業と地元の住民が連携し、新しいビジネスやサービス、製品を豊洲のまちで一緒に作り上げていく様な施設となることを目指して、商品企画を進めています。
シェア企業寮は、約40部屋の居室を計画しており、企業を超えて、住民同士の交流が当該施設内だけではなく街を舞台として発展していくことを目指していきます。

PROJECT3

大手町ゲートビルディング

“日本のビジネス街の中心地”「大手町」と“歴史と文化の地”「神田」の結節点

日本のビジネスを牽引する大手町・丸の内・有楽町エリアへのアクセスが良好であり、足元は神田の文化を肌で感じられる、大手町と神田の結節点、シンボルタワーとなるプロジェクト。
現在、鎌倉橋交差点に面した一面に鉄骨が立ち上がっている「大手町ゲートビルディング」は2026年誕生予定です。
鎌倉橋交差点を起点に、首都高速道路の下をくぐって鎌倉橋を渡ると大手町、北上すると淡路町方面に向かって左右には風情や歴史を感じる神田の街が広がるエリア。プロジェクトはこの地に、約1,000㎡の広場や船着場を整備し、新たな賑わいをもたらす存在を目指しています。
「この場所は大手町と神田のいいとこ取りができる」と力をこめて語る開発担当の小鴨に「想い」を聞きました。

神田の歴史を取り込んだ一帯開発

<小鴨>
本敷地の傍を流れる日本橋川沿いに、江戸城築の際、鎌倉から運んでくる石や木材を荷上する鎌倉河岸がありました。そこから、河岸に集まる人々に向けた居酒文化が発展し、現在まで続く豊かな食文化が広がっていきました。古くから神田に住まう方々は「江戸の始まりは神田だ」と誇りをもっています。
また、江戸に幕府が置かれて間もない時期に設置された菜市に端を発し、昭和初期には神田青果市場が誕生したことも神田に多くの飲食店が集積した背景かもしれません。
今回の開発は、高層ビルを作るだけではなく、街と街を繋ぎ、街や人々の生活に活気が生まれることを願い、神田の街の歴史に敬意を持ちながら進めています。

人道橋・交流広場
有楽町から丸の内を経由して続く仲通りと新たに整備される約1,000㎡の交流広場を繋ぐための人道橋を架橋。歩行者ネットワークを強化し、人々の回遊性を創出します。

船着場
東京都の防災への意向も踏まえ、かつて荷揚げ場だった場所に防災船着場を整備。船着場は公募により「鎌倉河岸船着場」と命名されました。周辺には木々やベンチを配し、ワーカーがリラックスできる空間が誕生します。

食と農の産業支援施設
建物の2~4階には「食と農」の産業支援施設を計画。全国の食と農に関わる生産者と消費者を繋げる共創空間を整備します。活動の要となる「めぐるめくプロジェクト」が既に発足し、大手町エリアでイベント等を開催しています。

新たなランドマークとなるオフィスビル

1Fビルエントランス完成予想CG

オフィスエントランス
<小鴨>
鎌倉橋交差点の顔となるオフィスエントランスは、三層吹き抜けの開放的な空間となります。エントランス内部は、天然の木材を多く使用する計画で、これは、環境配慮が注目される現在、木材の有効な活用と江戸の町をつくりあげた木材が当地で荷揚げされた歴史を踏まえています。また、木材と金属素材をそれぞれルーバー状に設置するデザインは、大手町と神田の結節点であること、街と街の繋がりを異素材で表現しています。

建物や地域への安全対策
<小鴨>
自然災害等への対策として、発災時にもなるべく平常時の活動が維持できるような電力供給機能を整備しています。これにより、ご入居者様のオフィス内の電気・換気設備、並びに建物内の衛生機能が72時間供給可能となります。また、建物本体は先進の制震構造により、地震による揺れを低減し、高い安全性を確保する設計を採用しています。

環境に配慮した建物構造
<小鴨>
現代は環境配慮を避けて通ることは出来ない時代です。本プロジェクトにおいても、建物のエネルギー使用量を低減させる仕組み作りに注力しており、諸官庁・関係団体が認証する制度の内、建物オフィス部分において「ZEB Ready」(エネルギー使用量を通常より50%以上低減)の取得や100%再生可能エネルギー由来の電力を導入する計画となっています。

今回は、三菱地所グループが手がける3つのオフィスビルを通じて、開発に携わる担当者の「想い」をお伝えしました。
見えてきたのは、計画の概要だけではなく、都心における各々の「街」の未来像と「人」の未来像。オフィスビルは、働く人のためだけではなく、地域の方や近くを通りがかった方がテナント飲食店を利用したり、周辺の憩いの空間等で過ごす場所でもあります。
建物の開発には、それぞれの想いや願い、工夫が散りばめられています。これからのオフィスビルは、ただの四角い建物ではなく「新しい何か」に出会える場所になっていくかもしれません。
「オフィスビル」に関するご要望・ご相談がありましたら、メックグランパートナーズまでお問合せください。

※掲載の写真は2024年9月に撮影したものです。(提供写真・参考写真を除く)
※掲載の完成予想CGは計画段階の図面を基に描き起こしたもので実際とは多少ことなり、一部再現されていない設備機器等がございます。植栽は、特定の季節やご入居時の状態を想定して描かれたものではありません。

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